葛
国道脇の金網フェンスに葛が絡み付き、上部を乗
り越えた蔓と葉が、路肩に降りて来ようとしている。
数十メートルも続く葛の葉のフェンスの横を、乗用
車やトラックや路線バスが走って行く。
丘の斜面に葛が繁茂している。頂上へ向かうアス
ファルト道路の、ガード柵の白いパイプの間から、
斜面を這い登って来た蔓と葉が、更に上方に進出し
ようと機を窺っている。
山間の作業小屋の外に、葛の茂みが寄り集まり、
大きな塊になっている場所がある。その下には、鉄
骨混じりのコンクリート塊や廃材や、錆びた機械部
品等が積み上げられている。
ウバメガシに葛が取り付いている。樹体の大半を
葛の葉が覆い、隣のモチノキにまで広がる勢いだ。
あちこちの葉陰から、長い花茎が上向きに突き出し、
赤紫色や濃紺の花を咲かせている。
河川敷の植物群落が、夥しい数の葛の葉で覆われ
ている。広さはサッカー場に迫るほどだ。凹凸のあ
る分厚い深緑の絨毯の下で、葛の蔓にがんじ搦めに
緊縛された中・低木が喘いでいる。
葛の茂みの中には、ゾウムシ、カメムシ、クズノ
チビタマムシ等、様々な虫がいる。バッタが跳ね、
暗い地面をヘビやムカデが這っている。猫が走り込
み、犬が鼻を突っ込む。時にはヒトも来る。
海辺の廃工場の破れたトタン塀の下から、地面を
匍匐し侵入して来る葛の蔓。採石場跡の傾いた廃電
柱が、枯れた葛の葉で覆われていることもある。ま
るで大きな鳥の巣のように。