Foliage Poet

つたない詩の倉庫/推敲 ・ 改作 ・ 編集

詩集 美しい羽根 ( 未完)

 

 しゅりけん 

  

じゅうじか?

ううん

かざぐるま?

ううん

なにかのかざり?

ううん

なに?

しゅりけん

 

チラシを丸めた細い棒を二つ

十字形に組み合わせて

セロテープをぐるぐる巻いてある

 

逃げるぼくに向かって

えいっ

 

きみは思いっ切り

自作のしゅりけんを投げ付ける

  

ピューッと飛び上がって

とんでもない方向に落ちて行った

 

ぼくがしゅりけんを拾うと

きみは大パニック

逃げまどう小さな背中に狙いを定めて

えいっ

春には元気な小学一年生になれ

 

十二月の公園の日暮れ時

お目当てのイルミネーションが

木々に灯り始めた

 

 

 

 マラソン大会

 

一年生と合同で走った

スタート直後はなんと最下位

結果は三十九人中で三十番

 

「二年生なのに情けない」

パスタランチを食べながら

お母さんとお婆ちゃんが嘆く

 

「十人ぐらいぬいたよ」

キッズランチを食べながら

きみは抗議をしている

 

「がんばって走っていたぞ」

やっぱりパスタランチのぼくは

一生懸命きみの肩を持つ

 

内心では来年に向けて

星一徹ばりの鬼コーチに

変身する決意を固めているのだ

 

窓から海が見えるレストラン

貨物船がゆっくりと横切って行く

 

「でっかいなあ」

「どうたいのしたがまっ赤!」

 

食後のコーヒーが来て

貨物船は見えなくなって

鬼コーチの件は

きれいさっぱり忘れてしまった

 

 

 

 一輪車

 

七歳のみーちゃんが

やっと乗れるようになった

練習した甲斐があったね

 

ぼくは思うんだが

中高年の足腰の衰え防止に

一輪車はいいんじゃないか

 

イオンの売り場へ行って

人目を気にしながら跨ってみる

乗れても自慢はやめとこう

 

おおっと 跨ることができない

ペダルに足も掛けられない

ひっくり転んで怪我しそうだ

 

ぽっこりお腹に良さそうなのに……

未練たっぷりで売り場を立ち去った

 

ぼくは思うんだが

あんなものに乗れる奴は

ヘンだ

 

 

 

 なわ跳び

 

野良猫が生垣から顔を出して

じっとこっちを見ている

 

 /かけとび

 あやとび/

 /ステップとび

 

去年はできなくて癇癪を起していた

ふふふ まあ頑張れよコワッパ と思った

それが今では二年生でも上手い方らしい

 

 こうさとび/

 /にじゅうとび

 はやぶさ!/

 

ぼくができなくてもいい筈なのに

どういうわけなんだ この焦りは

 

 /普通のなわ跳びなら

 ぼくもこないだからやってるよ/

 (フィットネスのためにね)

 

 それはまえとび/

 /八十回つづけてできるよ

 ねえ/百回できる?/

 

 /ようし

 イッチ/ニイ/サン/シイ

 /ふうっ(飛ばしてやれ)/

 キュウジュキュ/ヒャク!

 /やったやったー

 

 だめ/

 

野良猫は興味なさそうな顔をして

児童公園を横切って行った

 

 

 

 熱気球試乗会 

 

 1

 

巨大坊主はビジュアル系だ

カラフルなパターン模様に

アルファベットのロゴマーク

 

地上に降りて来た熱気球

スタッフが点検している

ゴンドラの前には

家族連れの長い行列

 

子供達は風船で遊んだり

追い駆けっこをしたり

風ぐるまを回したり

紙ヒコーキを飛ばしたり

おとなしく待っていられない

 

シャボン玉のひと群れが

青空に散らばって

 

十月の森林公園の広場に

熱気球が直立している

 

 

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 2

 

乗るのいや!

乗るのいや!

い、や!

 

あんなに楽しみにしていたのに

早起きして並んでいるのに

そういうことを言い出すのか?

 

少し強い風が吹いたようだ

熱気球のゴンドラが揺れて

乗っていたお母さんと子供達が

悲鳴を上げたのを見てしまったのだ

 

どうやって乗せてやろうか

料金の、元を取るまで、帰らんぞ。

(七五調で方針が決まった)

 

やがて私達の番が来た

拝むような説得

周囲の笑いを誘う懇願

地上へ降りて来たゴンドラに

いささか無理やり押し込んだ

 

スタッフが繋留ロープを解く

その瞬間 足元から

ゴンドラがふわっと浮かんだ

 

熱気球ふわりみーちゃんが笑った」

 

一句ひねり出しながら

ホッとしている秋の日曜日

 

 

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 3

 

ゴォーッ!

ゴォーッ!

頭上でいきなり音がした

 

バーナー噴射のオレンジ色の炎

エンベロープ内に熱が送り込まれ

熱気球が上昇して行く

 

地上から小学生の男の子が

歓声を上げながら手を振ってくる

お母さんが額に手を翳して

こちらを見上げている

 

ゴンドラの高度が

樹々のてっぺんを超えて

今 森の地平が見えた

遠くに薄色の山々

見上げると青空の半分を

熱気球がまあるく隠している

 

さあ一緒に

オーイ!

地上のみんなに手を振ろう

ヤッホー!

遠くの空にも

 

熱気球きのうの空に手を振って」

 

あっちの空にも

 

熱気球あしたの空へ流れ着け」

 

しばらくの間

私達は空を漂っていた

 

 

 *ゴンドラの、高度はたったの、8m。(笑) 

 

 

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